わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
ずっと黙って下を向いてるわたしに
彼が声をかける。

「よかったな、あいつはいいやつだ」

なんて返したらいいの。

彼の顔、まともに見られない。

「のど、乾いただろ。待ってて」

彼は立ち上がって部屋をでていく。

ゆっくり顔を上げて後ろ姿を眺める。

見慣れた背中。

いつも、あの背中に抱きついてた。

見慣れた腕。

いつも、あの腕をつかんで手を

しっかり握っていた。
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