わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
わたしは、小声でささやく。

「教科書、返してよ」

「はぁ?」

呆れたような反応。

「何も知らないんだな。おれはやってないぞ 」

「…でも、ないの」

「そんなことするのは、こいつさ。まぁ、よく見てなよ」

あいつの背中越しに腕が伸びていく。

そして、斜め前の席を指差した。

その指先にわたしは目を向ける。

きれいな黒髪がサラサラと揺れてる。

あの子は…


たしかあの人に告白して振られたって
いつだったか噂された子。

優しくて、可愛くて…

クラスの人気者。

あの人の女の子バージョンって感じ。

あの子が…?

「少しは状況が理解できたか?」

頭のなかを整理していく。
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