わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
「お前にそれだけ価値があったからさ」

心の声、通じるんだ。

「あのとき殺されると思って逃げただろ?」

わたしは、こくりと頷く。

「そんなこと、しない。するわけない」

「…じゃ、なんでナイフなんか?」

「お前の気持ちをおれは守れなかった。あのときは 死ぬふりをして、同情されたかった。戻ってきてほしかったんだ」

「……」

「ほんと、汚い考えだったよな」

そんな、

そんな今さら言わないでっ。
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