月とドーナツ【短編】
『コタロー、そうだな。くよくよしている場合じゃないな』

そう言うと、スックと立ち上がり、手ばやに僕のご飯と水を用意すると奴は

『彼女の元へ行ってくる。彼女を絶対、死なせないから…』

そう呟くと奴はまた出て行った




『シナセナイ…』

その言葉に僕はハッとした

何故なら、毎晩、眠る前に僕を抱き寄せると

『コタロー、私より先に死なないで。私を置いてったりしないで。お願いだから…』

正直、『シナナイデ』という彼女の言葉の意味がよく、わからなかった

だって、テレビを見ていても死んだりした人が別の日には歌を歌ったり踊ったりと…

だから僕なりに考えたんだ

死ぬっていうのは眠ることなんじゃないかって

だから、いつだって僕は彼女より先に眠る事をしなかったんだ


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