REALWORLD
会長の手にはいくつかの切り傷のようなものがあった。
「何でもないから」
私に見えないように、そっと腕を後ろに回す。
「心、悪いけど事務室に報告してきてくれないか」
始末書書いたから、と言って紙を渡すと、心くんは頷いて生徒会室を出て行った。
「ごめん」
「…何で謝るんですか」
私は先輩の腕を引いて、椅子に座らせた。
「なんか、すごく哀しそうな顔してるから」
……人が怪我しているのを見て笑えるほど、私は酷くない。
黙ったまま、救急箱を取り出した。
「奏さ、」
向井先輩が見つめているのが分かっていたから、目を合わせないように傷口に目を落とす。
「なんだかんだ言って、俺のこと本当に嫌い?」