狼さまと少女
大きな木々に囲まれたここは、不思議と静かだ。
風の音も、葉の重なり合う音さえ聞こえない。
聞こえるものと言えば、私の歩く音のみ。

山神様の妻になる女性は、自分が行くべきところが教えられずとも分かるという。
そして彼女たちが与えられた役目をこなしてきたからこそ、村の生活が成り立つことが出来た。

私も16歳まで、何不自由なく暮らせて来れたのは、 今までの山神様の妻のおかげだと思っている。
それだから、私は今までの彼女たちのように、やり遂げねばならない。


そう16年間思ってきたはずなのに、足が震える。
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