狼さまと少女
このまま行かなければならないことは分かるのに、動けない。
ついに立ち止まってしまう。

思わずしゃがみこんで膝を抱える。
何をしているのだろう。
私は一体何を教えられてきたというのか。 このまま立ち止まるなんて、役目を放棄したのと同じことだ。
村と家族、それに巫女様を裏切っているのと同じだ。

なんて情けないのだろう。
生まれてから一度も切ったことのない黒髪が落ちる。

その時、微かな息づかいが聞こえた。
はっとして顔を上げる。

何かが動いている。
その何かがこちらに向かってきている。

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