シアワセ
はぁー…。訳分からん。
でも寝ない。ってか寝れん。あのでっかい声じゃね…耳痛いよ。カッパめ…


『琴那っ!道井君んとこ行こ?みんないるしさ。』
『桜〜♪お前は可愛いなぁ♪いいよっ。行こっ』

桜は本当に可愛い。小さくて、クリッとした目。
髪はちょっと茶色めでストレートのミディアム。

ってか道井君の席のまわりは凄いことになってる。
だってクラス34人全員がいるんだもん。

おかげで小さい桜は道井君が見えないと騒いでる。

そんな…アイドルじゃないんだから。

『ねぇ、桂城さん?もしかしてジャイアンタの桂城投手って君のお父さん?』

───サ−

教室がシンとした。

『俺もしかして失礼なことした!?桂城さん!ごめんね!』

道井君は立ち上がるとわたしに頭を下げた。

『平気平気〜!うん、わたしの親父はジャイアントのピッチャーだよ。よく分かったね!』

『よかったぁ!うん、なんか母さんがどっかから情報仕入れてきたんだ。俺、すっげぇ憧れてんの!』

本当に憧れてれてるんだ。

あんなに瞳がキラキラしてる。

『あんな親父を?ありがとう。親父に言っとくねっ。』
できる筈のないことを言ってしまった。

だけど今はまだ道井君に本当のことは言わないことにした。


道井君は嬉しそうに
まじで!?と喜んでる。

なんだかこっちまで嬉しくなってきたよ。

あんな親父に憧れてくれている…。

わたしが道井君に感謝したいぐらいだよ。ありがとう。

そう言いたいのをぐっと堪える。


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