別の手を選んでも(短編)
「何にもわからないでしょ、今。

 みんなの名前も、学校のことも」

「う、うん」

「だったら、なにかやったほうがいいよ。

 おれがつきあってやるよ」

「へ!? ええ???」

「まかせとけって」



 いいながら、いたずらっぽく笑って、すばやく、私の手をとった。

 そのまま、手を上に上げる。



「はい、先生。

 おれ、転校生と一緒になにか、役員やります。

 なんでもいいです。

 あまってるのなんですか」

「は? するのか、おまえ。・・・あまってるのか?」



 教卓に寄りかかって、プリントをめくっていた北村先生は、めんくらったように顔をあげたが、黒板に目をやった。



「ん? ああ、もうペアで決まってないのは学級委員しかないな」

「そっか、それでいいです。山本、相原ペアできまり」



 あっさりと陸はいった。

 私は唖然。

 転校して一時間もたってないのに、学級委員? 

 


 

 
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