別の手を選んでも(短編)
「はい、やります」



 私はうなずいた。

 迷って、萎縮していても、何も始まらないよね。
 


「そうか。じゃ、よろしく頼むよ」



 北村先生は、振り向いて、黒板に私と、陸の名前を書いた。



 その後、班決めは何人かの女の子たちが話しかけてきてくれて、すんなりといったんだ。

 陸が私のとまどいを消してくれたんだ。臆することなく、話が出来た。



 陸のおかげ。

 夏休みも近くなった頃、陸に聞いたことがある。



 どうして、私に最初に話しかけてくれたのって?



 そうしたら、陸は答えた。



 おれも、小学校までは転校が多くて、転校してくる不安とかとまどいとかよくわかるから・・・なんとなく、ほっとけなかったんだ・・・って。



 私はそのとき、心からのありがとうをいったんだ。



 陸がいなかったら、こんなにすんなりとなじめなかったし、その後、いろいろあったときも、乗り越えられなかったかもしれない。


 
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