別の手を選んでも(短編)
「卒業式だから、ないてもいいけど?」


 陸がいたずらっぽく笑う。



「泣いたら、熱烈に慰めちゃうけど、いい?」

「それは困る・・・かも」



 否定して、一歩後ずさろうとしたけど、陸が手をとって、私を引き止めた。

 笑いを収めて、真剣にいった。



「逃げないで。

 おれのこと、特別に好きじゃなくても、逃げることだけはしないでほしい。

 今すぐ、答えがほしくて、芽生に気持ち伝えたわけじゃないから。

 ただ・・・知っていてほしかった。

 おれが芽生を好きだってこと」

「り・・・く」



 いって、目から一滴、涙が零れ落ちた。



 今すぐ答えは要らないという、陸の言葉に甘えてしまう。

 

「ありがとう・・・。私、ずるいね」



 涙が止まらない。

 苦しいよ、やさしさがとても、痛い。

  


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