別の手を選んでも(短編)
「泣くなって」



 陸がハンカチを差し出した。

 受け取って、顔をおおう。

 泣き顔みられるのは、恥ずかしい。



「ああ、陸が、芽生なかしてる!」

「ほんとだ、なにしてんのよ!」



 叫びとともに、駆け寄ってくるたくさんの足音。



 たくさん出来たよ、友達。

 みんな、みんな、最初に陸が私の手をひいてくれた、おかげ。



「うるせ! 卒業式は、泣くのがあたりまえなの。

 泣いたら、おれが慰めるからいいんだよ」

「なんだよ、それ」

「大丈夫、芽生?」



 心配しながら、かけてくれる声。

 私は涙をぬぐって、顔をあげた。

 笑っていう。



「私、この学校にきてよかった」



 心からの言葉。

 さようならはつらかったけど、新しい出会いでたくさんのものを得ることができたんだ。

 

 
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