別の手を選んでも(短編)
 
 はらはらと、桜の花びらが散るよ。

 でも、目の前にいるのはあなたじゃない。



 遼、あなたじゃないの。



「芽生、おれの話、きいてる?」


 
 少し怒ったような顔をして、私を見下ろしているのは相原 陸(アイハラ リク)だ。

 春の強い風に、乱される長く伸びた髪を押さえながら、私は、陸を見上げて、答えた。

 背の高い陸をいつも、見上げる私。



「聞いてるよ?」

「ほんとかよ? 怪しい。白昼夢でもみてるような顔してたくせに。

 それとも、おれの、二度目の告白で魂でもぬかれちゃった?」



 冗談ぽくいっているけど、目はとても真剣だった。

 どくん、と、心臓が震えた。

 真っ直ぐに、私を見下ろして、もう一度、さっきと同じ台詞を陸はいった。

 



 
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