別の手を選んでも(短編)
おまけ(届かなかった葉書)
 集合ポストを開け、見覚えのある絵葉書をみつけて、おれはためいきをついた。

 あて先の上には、赤いスタンプが押してある。

 転送期間経過のためお届けできませんでした---と記してあった。



「・・・届かなかったか」



 新しい番号とアドレス絵葉書に記しておくったんだけど、届かなかった。

 彼女のアドレスと番号は変更されているようで、携帯で知らせようもなかったから。

 

 引っ越したのか。

 親に聞けば、行き先はわかるのかもしれないけど、そこまでするのはためらいがあった。



 彼女はおれのことを忘れたいのかもしれないから。



 あれから、一年と少し。

 送られるメールに答えるばかりじゃなくて、自分からもおくればよかったのかなと思う。

 けど・・・手紙や文章を書くのが苦手で、何を書いていいのかわからなかったんだ。言い訳にしかすぎないけど。



 気づくと回数は減って、やがてゼロになった。



 新しく携帯会社を変えて、新しい携帯にして、一番にアドレスを教えなくちゃと思った相手は、彼女だった。

 今更、おれの連絡先なんて必要ないかもしれないけど・・・もしかしたら、なにかあったときに、ふいに俺のことを思い出して、頼ってくるかもしれないって思ったんだ。

 何かあったら、いつでも連絡してと、おれはいったから。

 おれの中で、その言葉は何年たっても、時効じゃないんだ。



 芽生---今、どうしてる? 一人でないてないよね?

 それがとても心配で、会えない事がとても苦しい。



 おれのこと忘れてしまっても、笑って、幸せでいてくれればいい。

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