別の手を選んでも(短編)
目を閉じると、いつも笑っていた芽生の顔が浮かぶ。
会えない日々が積み重なるにつれて、芽生のことが好きだったということに気がつかされた。
いつもそばにいることが当たり前で、気がつかなかったんだ。
言葉にして、伝えておけばよかったと思う。
芽生が好きだって。
両思いになっても、すぐに会えなくなるってきまっていたおれたち。
でも、気持ちを通い合わせていたら、今が、変わっていたように思えるんだ。
もう一度、芽生に会いたいと思う。
子供のおれは、自分ではどうすることもできなかったけど・・・。
これから。
「遼、なにしてるの?」
後ろから声をかけられて、振り返ると母さんがいた。
腕には、ガムテープや、市販のゴミ袋がはいったホームセンターの袋。
「なにか、手紙きてた?」
「別に? それより、重そうだね、持つよ」
「ありがとう。引越しなんて久しぶりだし、もう十数年ぶりでしょ? 不用品がざくざくでてくるのよねぇ。ゴミ袋、たりないわ」
「業者さんにまかせればいいのに」
おれがそういうと、母さんは首を振った。