別の手を選んでも(短編)
「できることはしとくの。だって、あんまり、家の中、ぐちゃぐちゃだったら・・・恥ずかしいでしょ」

「大丈夫だって」

「いいの。・・・でも」



 母さんが急にまじめな顔して、おれをみた。



「あなたは本当にいいの、遼? 高校入学したばかりなのに、いきなり、転校なんてことになって。こんな、半端な時期に。

 お父さんだけ、単身赴任してもらってもいいのよ。こっちには、おじいちゃんの家だってあるし」

「いいっていっただろ?」

「でも・・・」



 高校に入学して、数ヶ月。

 父さんの転勤がきまった。時期はずれの。前任者が病気で長期入院することになり、その穴を埋まるために。

 行く場所は、芽衣と同じ県だ。支店が違うから、住む社宅は違うだろうけど、同じ県にいれば、会いにいける。



 芽生に会いたい。



 だから、住み慣れた場所から離れることに、迷いはなかった。



「さ、帰ろう。荷物まとめるんだろ、手伝うよ」





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