楓 ―KAEDE―
あれれ、
迷子になっちゃった?
俺様、
ちょっぴり泣きべそ。
でも大丈夫。
俺様、強い子だから。
泣かない。
泣かない。
すぐにお空に顔をあげて、
「――じぃちゃーん!」
って呼んでみた。
じぃちゃんはね、
この森のじぃちゃん。
迷いの森の番人。
この森で、
いっちばん大きな樹なんだよ。
ザァザァ~…
1つ大きな風が吹くと、
周りの樹の葉っぱが一斉にざわめいた。
『……また遊ぶのに夢中で迷子かのぅ?困った子じゃ…』
誰の声?
この声は、
森のじぃちゃんの声。