楓 ―KAEDE―


じぃちゃんは、
何でも知っている。


「どっちに行けばいいの?」

『んん?』

姿は見えない。

じぃちゃんは樹だから、
根っこがあって、
自分の場所から動けない。

自分の声を風に乗せて、
何でも答えてくれるけれど…


「――違った!」

俺様、
ちょっぴり失敗。

人にお願いする時は、
ちゃんとしなきゃね?


「おじいちゃん、お願いします。帰り道を教えてください!」


俺様、イイコ。

周りの樹たちも、
優しく緑色の光を降らせてくれた。


『よしよし、イイコには良いコトを教えてあげようかの?』

「良いコト…?」


首を傾げると、
また頭が茶色の地面にくっついちゃいそう。


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