赤い糸のその先は…。
何処の家も、年越しで遅くまで明かりがついている。
だから、こんな時間でも夜景がキレイに見えるのかなぁ。
きっと、空気も冷え込んでいるから余計にそう見えるのかもしれない。
新年の祈願をした後に、街より小高い所にある公園に夜景を見に来た。
「そういえば、新規の企画案で私の言った事がヒントになってるって、
室長から聞いたんですけど。何の事ですか?」
「あぁ、うちのカタログに掲載されている商品を取り扱ってるデパートみたいな
お店があったらいいなぁって言ったろ? それだ。」
「えっ?」
「カタログでイメージを膨らませて、ショップで実際に触れる。
そしてもう一度カタログを見て検討をしてみる。
納得して購入できるように出来たらなぁってさ。」
課長とのデートの時に、
仕事のアイデアが浮かんでは二人で盛り上がっていた話題の事だ。
あの話、すぐに企画書を作ってたんだぁ。
「お前と二人で構想した話だったからな、
社長にはお前と連名で企画書を提出しておいたよ。」
「うそ。」
「うそじゃない。社長も面白いって言ってたし。手ごたえはあったぞ。」
「だって、私は高卒のただの下っ端なのに? 課長と連名だなんて...。」
「何言ってるんだ?学歴は関係ないし、社員一人一人が会社の戦力だ。
お前も大事な戦力なんだよ。
今後は部署に関係なく、企画案は募集していくつもりだからな。」
課長が大きな手でクシャリと頭を撫ぜてくれた。
会社での自分の存在価値を認められて、うれしくなった。