赤い糸のその先は…。

「企画部商品開発課の課長をすることになった、田崎幸太郎だ。」


眼鏡の奥の瞳には表情がなく、

でも、どこかで見たことがあるような面影だった。


うーん、確かに整った顔をしてるわね。だけど、

この人って笑う事があるのかなぁ。表情筋が乏しそう…。

だって、鉄仮面みたいに無表情なんだもん。


まぁ、興味は無いけどね。わたしにはカッコイイお兄ちゃんがいるし。



「業務部秘書課から異動しました。佐伯ゆず葉です。よろしくお願いします。」


三人揃ったところで、フロアにいる他の社員の前で自己紹介をした。

この企画部は、商品開発課、営業課、広報課に大きく分けられている。

商品開発課は、わが社のオリジナル商品の発案とその商品化、

商品クレームをもとに商品の改善をメーカーに依頼する。

営業課は、取扱い商品の開拓など

メーカーからの商品の売り込みにも対応する。

広報課は、もちろんカタログの作成、宣伝。

・・・と、こんな感じに分かれている。 たぶん。

正直、自分がかかわった仕事以外はよく解っていなかったりするんだよね。

私はというと、商品開発課に属するらしい。

田崎課長は、企画部全体の責任者で、主に開発課を担当をする。

で、私は課長のサポート役みたい。 いわば雑用係り。 下っ端だ。


「佐伯、午後から早速デスクの移動をしろ。やる事は沢山あるからな。」


ニコリともしない田崎課長に、早速指示された。


室長ってば、今日は顔合わせって言ってなかったっけ?




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