赤い糸のその先は…。
『これ、借りていた傘返すよ。』
目の前に置かれた傘は、ピンクのウサギ模様の可愛らしいものだった。
今日赴任してきたばかりの課長が、なぜ私に傘を?
だって、今日、初めて会ったんだよね?
「おっしゃっている事がわかりません。 人違いでは?」
「覚えてない? 借りたのは3年前なんだけど・・・。」
眼鏡を外しながら、少し眉を下げて悲しそうな顔をする田崎課長は、
思い出してと言わんばかりに見つめてくる。
そんな顔をされちゃうと、なんだか自分が失礼な事でも言ったのかしらと、
軽い罪悪感なんか感じちゃうわけで...
だから、仕事で疲れた脳みそを一生懸命奮い立たせて思い出そうとしてみた。
あっ!!!
そうだ、たしか3年前だ。