お姫様に花束を
「でも……そんな希少な花がどうしてこんなに……」
「祖母の代からあるの。
祖母がここで大切に育てていたのを、私が受け継いだのよ」
なるほど……。
「コアブリーの花言葉は『大切な思い出』……そして『愛』。
……あなたもいつか大切な人が現れたら、この花を見せてあげなさいって」
大切な人………。
……それが……俺……。
一緒にいることが許されない……俺。
「だから……どうしても最後にここに連れて来たかったの。
……リオンを」
カノン……。
……俺はたまらず、しゃがみこんでいるカノンを後ろから強く抱きしめた。
俺よりもずっと小さな体……。
だけど……カノンには守らなければならない大きなものがある。
俺もこの国に暮らす国民なら……
……彼女を大切に思うなら……
……潔く、身を引くべきだ。
……だから、最後に……
……最後にもう一度だけ。
……俺はゆっくりとカノンの柔らかな唇にキスを落とした――