お姫様に花束を

「でも……そんな希少な花がどうしてこんなに……」

「祖母の代からあるの。
祖母がここで大切に育てていたのを、私が受け継いだのよ」


なるほど……。


「コアブリーの花言葉は『大切な思い出』……そして『愛』。
……あなたもいつか大切な人が現れたら、この花を見せてあげなさいって」


大切な人………。

……それが……俺……。

一緒にいることが許されない……俺。


「だから……どうしても最後にここに連れて来たかったの。
……リオンを」


カノン……。


……俺はたまらず、しゃがみこんでいるカノンを後ろから強く抱きしめた。

俺よりもずっと小さな体……。

だけど……カノンには守らなければならない大きなものがある。


俺もこの国に暮らす国民なら……

……彼女を大切に思うなら……


……潔く、身を引くべきだ。


……だから、最後に……

……最後にもう一度だけ。


……俺はゆっくりとカノンの柔らかな唇にキスを落とした――

< 100 / 271 >

この作品をシェア

pagetop