お姫様に花束を
「カノン?」
「私、あなたと話している暇はないの。
用がないなら帰って」
そう言いながらデスクの上に散らかった書類をかき集める。
「カノン……どうしたんだ?
何かいつもと雰囲気が違くないか?」
「……そんなことない。
……でも、もし本当に雰囲気が変わったなら……。
……あなたの言う"低俗な庶民"のお陰かもしれないわね」
……リオンと出会って、私は少しでも変われた気がする。
……リオンが私を変えてくれた。
……私はそっと唇に触れてみた。
昨日……コアブリーに囲まれて交わした……最後のキス。
「っ……………」
……思い出すと、キュッと胸が苦しくなる。
だけど……当分忘れられそうにない、温もり――
「……カノン、お前……まさか……」
ディランが信じられないものを見るような目で私を見た。