お姫様に花束を
彼女の従兄弟
リオンside


鳥のさえずりが聞こえ、俺はゆっくり目を開けた。

あれ……何か天井が低い……。

辺りを見回すと、そこは狭いアパートの部屋だということが分かった。

あぁ……俺、帰ってきたんだっけ。


大きく伸びをして、静かな部屋を見回す。


「……本当に……帰ってきたんだな」


朝起きて、ウェルスさんが朝食に呼びにくることもない。

豪華な食事もない。

そして何より……カノンがいない。

カノンが部屋を訪ねてくることもない。


俺一人の……何でもない、平凡な日常が戻ってきた。


「とりあえず、朝飯……」


そう思って冷蔵庫の中を漁るが、しばらく家を開けていたので期限切れの物しかない。

……昨日、帰ってすぐに買い物に行くんだったな。


時計を見れば、もうすでに9時を回っていた。

どうやら疲れていつもより眠りすぎたらしい。


この時間なら……


俺はすぐに身支度を整えて外に出る準備をした。

< 109 / 271 >

この作品をシェア

pagetop