お姫様に花束を
カノンside

ウェルスに散々叱られ、城に連れ戻された私は自室の窓から景色を眺めていた。

広い庭。

ここからは街の様子は見えない。


ほんの数時間前までは街中にいたというのに……。


コンコン、とドアをノックする音が聞こえてきた。


「……はい」


返事をすれば、ドアがゆっくりと開いた。


「失礼します、カノン様。
紅茶をお持ち致しました」


紅茶……。

いつものようにテキパキと準備をするウェルス。

そんなウェルスの手元を見ながら、私はリオンの元で飲んだあのお茶を思い出していた。


「ねぇ……ウェルス」

「何でございましょう」

「麦茶、って知ってる?」

「麦茶……でございますか?
えぇ、それはもちろん……」

「私、麦茶が飲みたい。
お願い、ウェルス」


ウェルスは少し驚いたような顔をしていたけど、すぐににっこりと笑った。


「かしこまりました。
すぐにお持ち致します」

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