お姫様に花束を
「今だってカノンは君のことが忘れられずに職務が疎かになりかけている。
カノンは君と会って変わってしまった。
……あんなの、俺が知ってるカノンじゃない」
ディラン様はキッと鋭い目で俺を睨んだ。
「……何が言いたいのかよく分かりませんが俺はもうカノンと会う機会はないのでご心配は無用です」
……ていうか早く帰ってほしい。
何かこの人……ムカつく。
「……わざわざ俺に釘刺しに来たんですか?」
「君のこと調べてここまで来たんだよ。
カノンが引きずってるみたいだから。
あのままだといずれウチの母につけこまれて王位の座から引きずり落とされるよ。
もし俺が国王になりたいと言ったら母は何としてでもカノンを陥れる。
そういう人だから」
……何だ、コイツ。
「カノンのためを思うなら、潔く身を引くべきだね」
……だからもう会う機会はないって言ってるだろ。
人の話聞いてるのか?
ていうか、本当にそんなこと言うためにわざわざここまで来たのかよ。
俺が心のなかで悪態ついた……その時。
「カノンのため、じゃなくて自分のためなんじゃないの?」
……突然、部屋の中からもう一人の声が聞こえた。