お姫様に花束を


あのディラン様が……カノンを……。

あれ……でも……


「カノンとディラン様って従兄弟なんじゃ……」

「そうだよ。
だから叶わない恋っていうかさ……。
まぁ、従兄弟同士が結婚できないってわけじゃないけど。
でもカノンの気持ちがディランに向くことはないだろうね。
……だからこそ少し気持ちが歪んじゃったのかな」


エリック様は苦笑いしながらそう言った。


「んで、ディランのことは置いといて。
……リオンはどうなのさ。
カノンから聞く限りだと結構いいとこまでいったんじゃないの?」

「いいとこっていうか……まぁ……」

「ノコノコ帰ってきちゃってよかったわけ?」


……しょうがない。

……帰ってくる他、どうしようもなかったんだから。


「……いいんですよ。
これが一番いいんです。
俺にとっても……カノンにとっても。
これがあるべき形なんです」


いくら綺麗事を並べたところで、現実的には身分の差はとても大きい。

ましてや相手が王女様なら……。


「あるべき形……ね。
これが本当にあるべき形なのかな。
……想い合ってる二人がお互い未練タラタラなまま別れることが」


エリック様がまるで射抜かれそうなほどまっすぐ……じっと俺の目を見つめた。

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