お姫様に花束を
「……あの、ジェイクさん」
「は、はい。
何でございましょう……」
「あ……。
ふふっ。そんな堅苦しい敬語遣わなくていいですよ」
「いや、ですが……」
「……ここにいる間だけは……私が王女だということは忘れてください」
私がそう言うと、ジェイクさんは私の顔を見たまましばらく固まった。
そして何かを感じ取ったのか、優しくフッと笑った。
「あいよ。そういうことなら、了解」
「……ありがとうございます」
この商店街にいる私は普通でありたい。
なぜか、心からそう思った。
「カノンちゃん、またコロッケ食べて行くかい?」
「え……いいんですか?」
「もちろん。
揚げたて、用意するからな。
ちょっと待ってろ」
ジェイクさんはそう言うと、店の奥に入っていってしまった。
私はただ突っ立ったままジェイクさんが戻ってくるのを待つ。
……その時だった。
「……カノン?」
……ふと……ずっと聞きたかった声が私の耳に届いた。