お姫様に花束を


「そしたらっ……一度でもお兄様を憎いと思ってしまった自分が怖くなって……っ。
あんなに大好きで……助けてくれたお兄様が……気づいたら大嫌いになってしまいそうで……それが怖くてっ……」


私は泣きながら小さく震えた。

……怖い。

……周りも……お兄様も……そして、自分ですらも……。


「……そんなこと……思っちゃいけなかったのに……。
一番思ってはいけない人だったのにっ……。
っ……それなのに、私っ……」


……それ以上はもう言葉が出なかった。

もう……涙を流しているだけで精一杯だった……。


……リオンがふわりと私を包み込んだ。

相変わらず……温かくて。

その温かさに……更に泣きそうになって。


「……大丈夫。
大丈夫だから……」


……ただそう言って、私を抱きしめながら
頭を優しく撫でてくれた。


たったそれだけなのに、なぜかすごく心が洗われていくような感じがして……。


……私はリオンの腕の中で涙を流し続けた。

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