お姫様に花束を
「その……は、初めてだから……」
「え?」
「……こうやって男の人と二人だけで出掛けるの……初めてだから……」
だから……それを意識すると……
……緊張する。
私がそっと顔を上げると、リオンは私の方を見ながら優しく微笑んでいた。
「……俺だってこんな風に遠出するのは初めてだよ。
しかも……メッチャ緊張してる」
……一緒だ。
そう分かると、なぜか心が落ち着き……安心した。
「……カノン」
「ん?」
私が返事をすると……隣に座っていたリオンは私の手をギュッとしっかり握った。
「……ナツメ町に着いたら……絶対俺から離れるなよ」
……その目は真剣そのものだった。
今、王女でいる私がナツメ町に行くことは本当に危険なことだ。
SPもつけずに行くなんて言語道断。
……そんなことは分かってる。
分かってるけど……どうしてもやらなきゃいけないことがある。
リオンはそんな私の気持ちを汲んでこうして一緒に来てくれてる……。
「……うん。……絶対」
小さな声でそう誓い……私はリオンの温かい手を握り返した。