お姫様に花束を

ゲンさんに連れてこられたのは、普通の一軒家だった。

私達はその前で家を見ながら立ち尽くす。


「えっと………これが名物?」

「そんなわけあるかい。
これはわしの家じゃ」

「ゲンさんの家?
どうして……」


私が聞くと、ゲンさんは呆れたような顔で口を開いた。


「お前さん達、そんな格好で歩き回るつもりかい?」

「あ………」

「しかももう日も暮れてきた。
観光はまた明日にしなされ」


明日……って言われても……

私はリオンと顔を見合わせる。


「あの、俺達……日帰りのつもりだったんで宿とか何もとってないんですけど……」

「そんなこと。
わしの家に泊まればいいじゃろ。
客人二人ぐらいならもてなせるぞい」


ゲンさんはそう言って朗らかに笑った。


「いいんですか……?」

「もちろん。
若いモンが観光に来るなんて最近じゃ滅多にないからの。
大歓迎じゃ。
……それに……」


ゲンさんは私の方を見て小さく口角を上げた。


「そんな格好をした王女様を暗い中放り出すわけにもいかんじゃろ」


…………え?

…………えぇっ!!


「ば……バレてた……?」

「むしろなぜバレてないと思っとったんじゃ」

「だ、だって……!」


私は焦りながらリオンの方を見た。

リオンは私とゲンさんを交互に見て苦笑いしていた。

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