お姫様に花束を

「今のお前さんは前王妃様……アナスタシア様のお若い頃にそっくりじゃ」


おばあ様の……若い頃……。


「……なぜお前さんがこのタイミングでこの町に来たのかは知らんが……。
……はっきり言うと、お前さんがここにいるのが他の連中にバレたら危険じゃぞ」


……分かってる。

それは分かってて……ここに来たんだから。


「……それでも、お前さんはこの町のことを知りたいと言うんじゃな?」


……私はゲンさんの目をまっすぐ見ながらゆっくりと頷いた。

それを見て、ゲンさんは満足そうに笑った。


「……その目。
アナスタシア様に本当によく似ておる」

「目……?」

「ま、今晩はここでゆっくりと過ごしんしゃい。
着替えなんぞはこっちで用意しておくからの」

「あのっ……」

「お前さん達の部屋は二階に上がってすぐの部屋じゃ。
何かあったらわしを呼びなされ」


ゲンさんは優しい声でそう言うと、居間から出て行った。

< 175 / 271 >

この作品をシェア

pagetop