お姫様に花束を
買い物を終え、俺のアパートに向かって商店街を通って帰る。
俺にとってはいつもの歩き慣れた商店街だ。
「うわぁ……ここは活気があって良いところね」
「ここは商店街の人達も本当に良い人達で温かい……俺の好きな場所なんだ」
「温かい……?」
カノンが小さく首を傾げた。
「どんな風に?」
「歩いてれば分かるよ」
俺がそう言うと、カノンは更に首を傾げた。
そんなカノンを連れて、俺はいつものように商店街を歩く。
「リオンはずっとこの辺りに住んでるの?」
「いや。
大学に入ってから今のアパートに住み始めたんだ。
実家はもうちょっと遠いよ」
「へ~……。
一人暮らしって……寂しくないの?」
「まぁ、最初は不安だったけど。
でも商店街の人達とか近所の人達が良い人でさ。
楽しくやってるよ」
「そう……なんだ……」
カノンはそう言うと、商店街の様子を黙ったまま眺め始めた。
その顔はさっきまでの楽しそうな顔ではなく……何を考えているのかよく分からない顔をしていた。
「……カノン?」
俺が声をかけると、カノンは小さく口を開いた。