お姫様に花束を

「それにしても……」


ゲンさんは目を細めて私を見る。


「……確かあの方も仰ってたな。
わしの焼いた魚を食べて……」


あの方って……。

……まさか……


「……おばあ様のこと、ですか?」


私が声に出してそう聞けば、ゲンさんはなぜか少しうろたえた。


「ゲンさん、おばあ様に会ったことがあるんですか?」

「………………」

「ゲンさん?」

「……さて、今日はこの町の名物を観に行くんじゃったな。
早めに行った方がいいじゃろ。
朝食を食べたらすぐ出るぞい」


あ………。

ゲンさんはぱっぱと朝食を食べ終えると居間を出ていってしまった。


「私……何かいけないこと聞いちゃった?」

「どうだろうな……。
でも、ゲンさんのあの様子からすると……聞かれたくないことなのかもしれないな」


聞かれたくないこと……。

おばあ様のこと……?

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