お姫様に花束を

ゲンさんが連れてきてくれたのは川だった。

川沿いには何本もの木が植わっている。

あれが……


「あれが紅葉の木じゃ」


確かに、今は緑色だけど形はしっかり紅葉の形をしていた。

目線を遠くに移すと、この木は川沿いまでズラーッと植わっているようだった。


これがもう少ししたら赤く色づいて……


「昔は秋になるとここの紅葉を見ようと観光客がたくさん押しかけたものじゃ」


ゲンさんが懐かしそうに目を細めながらそう言う。


「昔は……本当に賑わっていたんですね」

「わしが子供の頃はな、奇跡の町と呼ばれておったんじゃよ」

「「奇跡の町?」」


私とリオンが同時に聞き返す。

ゲンさんは柔らかに笑みを浮かべながら答えてくれた。


「春夏秋冬……それぞれの季節においてこの町の自然はわしらに素晴らしいものを見せてくれる。
この国でもここまで自然豊かな場所は珍しいじゃろう?」

「確かに……そうですね」


私もここまで自然豊かな町は見たことがない。

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