お姫様に花束を

「それが由縁で奇跡の町と呼ばれておったんじゃ。
……まぁ、本当はもう一つ由来があるんじゃが……」


もう一つ……?

ゲンさんはゴホンと咳払いをすると、もう一度口を開く。


「いつからかそんな呼び名はなくなってしまったが……。
それでもわしはこの町が素晴らしい町であるに違いないと思っている」


ゲンさん……。


「国がこの町を活性化させようとしてくれるのはありがたいと思っておる。
……じゃが、わしはこの町の自然を壊してまで活性化させたいとは思わんのじゃ」


え……?

ちょっと待って……。


「自然を壊すって……どういうことですか?」


私がそう聞くと、ゲンさんは驚いたように私を見た。


「どういうことって……。
そのまんまの意味じゃ。
あの場所に建物を建てるなんぞ……自然破壊以外の何物でもないじゃろ」


あの場所……?

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