お姫様に花束を
「……ちょっと待ってください。
私達が建設場所に選んだのはこの町の空き地のはずです。
雑草以外何もない場所だと伺っていますが……」
「雑草じゃと?
……あれが雑草に見えるんじゃったらお前さん達の目は相当おかしいんじゃな。
それか余程冷たい人間……ということか」
ゲンさんが冷たい目で私を見る。
待って……。
訳が分からない……。
だって、私は……。
頭が混乱して何も考えられない……。
ただ、ゲンさんの冷たい視線が私に突き刺さって……。
「はぁ……。
……お前さんはまともな人間じゃと思っておったが。
……わしの見込み違いじゃったようじゃの」
え……。
何言って……。
「……やはり、王家は変わってしまったのか……」
ゲンさんが切なそうにため息をつく。
私はただそんなゲンさんを見つめたまま、上手く言葉が出せなくて……
「……私……」
やっと出した声は、なぜか少し震えていた。
……怒っている。
あれほど優しかったゲンさんが……私に……私達王家の人間に……。
「……待ってください」
突然……私ではない声が聞こえ、私もゲンさんも驚いて声の主を見た。
……私の隣にいたリオンは真剣な表情でゲンさんの方を見ていた。
「カノンはまだ状況を把握していません。
混乱しています。
……ですから、ゲンさん。
その場所に連れていってくれませんか?」
「何……?」
ゲンさんが怪訝そうにリオンの顔を見た。
「お願いします」
リオン……。
「……私からも……お願いします」
元々、この町のことが知りたくてここに来たんだから……。
ちゃんと……知りたい。
この町の人達が……なぜ私達に抗議しているのかを。
「……はぁ」
ゲンさんは諦めたようにため息をついた。
「……付いてきなさい」