お姫様に花束を
「……国の事情は知らんが。
……でも、昨日お前さんが言った“この町のことをいろいろ知りたい”というその言葉にウソはなかった」
「え……?」
「なに、目を見ればそれぐらいのことは分かる。
わしだってだてに長生きしとらんわ」
ゲンさん……。
「だからといって、わしはまだ王家の人間を信用したわけじゃないからな」
「……はい」
「……じゃが、一つだけ良いことを教えてやる」
良いこと……?
私が首を傾げると、ゲンさんは目の前に広がっているお花畑を眺めた。
「……ここはアナスタシア様のお気に入りの場所じゃった」
え……?
おばあ様の……?
「……やっぱり、おばあ様はここに来たことがあるんだ……」
私がそう呟くと、ゲンさんは少し驚いたように私を見た。
そして、しばらく私を見つめると……ゆっくり口を開いた。
「なるほど……やはり覚えとらんかったか」
「え?」
覚えてないって……何が?
私が不思議に思っていると、ゲンさんは私の気持ちを察したのかすぐに答えてくれた。
「この町には……前国王夫妻をはじめ、現国王夫妻……そしてその子供であるロイ様と……カノン。
……お前さんもここに来たことがあるんじゃよ」