お姫様に花束を

「なぜ……そこまできっぱりと断言できるんですか?」


カノンがそう聞くと、ゲンさんはにっこりと目を細めて笑った。

でも、その笑みはカノンに向けられたものではなく……別の誰かに向けられたものではないかと俺には思えた。


「そりゃ、当たり前じゃ。
アナスタシア様がお出掛けになるときは当然警護がつく。
そして、アナスタシア様がこの町にいる間の警護はわしじゃったんじゃ」

「「……え?」」


……俺もカノンも思わず聞き返してしまった。

いや、だって……警護?

……ゲンさんが?


「何じゃ、その反応は。
こう見えても若い頃わしは武道をたしなんでおってな、そりゃあ強かったのなんのって」


そうだったのか……。


でも、一国の王妃の警護を任せられるということはやはりただの管理人ではなかったんだろう。


「じゃから、アナスタシア様がここに来るときはわしがいつも一緒に来てたんじゃ。
……でも、確かアナスタシア様はここには誰も連れてきてなかった。
いつも一人で来ておったからの」


……じゃあ、国王様もここが花畑だということは知らずに……

調査員の報告を鵜呑みにしてここへの建設を決定したということか……。


「……やっぱり……ここには私が知らなきゃいけないことがたくさんある」

「カノン?」


カノンは意を決したように俺を見上げた。


「リオン……いろいろ振り回してごめんなさい。
でも……もう少しだけ付き合ってくれる?」


カノン……。

俺は真剣なカノンの眼差しを受けながら、フッと口元を緩めた。


「振り回される覚悟で一緒にここまで来たんだから。
……最後まで付き合わないでどうする」

「リオン……」


カノンは嬉しそうに笑うと、ゲンさんへと視線を移す。

そして……


「……ゲンさん、お願いがあります」

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