お姫様に花束を

夜明け前とあって、さすがに人なんて歩いていない。

昼間だったら活気があって楽しいのだけど。

顔見知りのパン屋のおばちゃんが焼き立てのパンをお裾分けしてくれたり、肉屋のおっちゃんがコロッケをサービスしてくれたり……


……って、食べ物ばっかりだな。


でも、とにかくここは楽しい。


大学に入って一人暮らしを始める時は少し不安もあったが、周囲の人達のお陰で楽しく暮らせている。


特に刺激はないが、平穏に楽しく過ごせていた。


一般庶民との間に生まれた平凡な大学生の俺にとって、これが当たり前だと思っていた。


そう……。


……彼女と出会うまでは。


彼女に出会い、目まぐるしくいろんなものが変化していった。

自分の気持ちも……

俺の周囲も……


俺の人生そのものが、大きく変化していった――

< 2 / 271 >

この作品をシェア

pagetop