お姫様に花束を
肉屋の前まで行くと、おっちゃんは俺の隣のカノンを見て少し驚いたような顔をした。
「こりゃたまげた……」
おっちゃんの言葉に俺とカノンの間に緊張が走る……。
もしかして……バレた?
……ゴクリと唾を飲み込む。
「リオンが女の子を連れてるなんて……」
……え?
……そこ?
「いや~、本当に驚いた。
リオンにもとうとう彼女ができたのか」
「いや、彼女じゃなくて……」
「いいんだよ、照れなくて。
こりゃあお祝いしないとな。
ほれ、コロッケ。持ってけ」
笑いながらおっちゃんはコロッケを二つ手渡してきた。
「あの、お金は……」
カノンがそう言いかけると、おっちゃんは笑顔のまま首を横に振った。
「いらないよ。
これはサービスだからな」
「サービス……」
カノンは手渡されたコロッケをじっと見つめた。