お姫様に花束を

「カノン……コアブリーの生息地って……まさか……」

「……コアブル王国の東のはずれ。
そして、ナツメ町は王国の東のはずれに位置する……」


じゃあ、やっぱりこのコアブリーの花畑はこの町で撮られた物……?

この町に……あの花が……。


「……写真の感じからすると……古いものね……」

「前国王夫妻の写真と同じ年代に撮られたものだろうな」

「……じゃあ、これはおじい様とおばあ様が撮った写真……?」


カノンがじっと写真を見つめる。


……俺はそんなカノンを見ながら、城のビニールハウスでカノンが言っていた言葉を思い出していた。


「……カノン、言ってたよな。
コアブリーの花言葉は"大切な思い出"と"愛"だって」

「……うん」


俺はカノンの手からアルバムを取り、どこから落ちたのか分からないコアブリーの写真を最後のページにそっと貼りつけた。


「……きっと、前国王夫妻にとってこのアルバムは大事なものだったんだ。
家族の"大切な思い出"が詰まった……大事なアルバム。
……だから、城じゃなくてあえてここにアルバムを残したんじゃないか?
……家族の思い出が詰まった、この場所に……」


……カノンは覚えていないのかもしれないけど。

でも、確かにここにあったんだ。

何物にも変えられない……家族の幸せな思い出が。


「…………………」


カノンは何も言わず……アルバムから目をそらし、俺の胸に顔を埋めた。


……俺はカノンの頭をそっと優しく撫でた。
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