お姫様に花束を
「愛情……?」
「そう。
お客さんに美味しいって思ってもらえるように……このコロッケを食べてお客さんが笑顔になってくれるように。
そんな思いを込めながらコロッケを一つ一つ手作りしている。
だから美味いんだよ、ウチのコロッケは」
おっちゃんはそう得意気に話した。
カノンはおっちゃんの話を聞きながら手元のコロッケに視線を落とした。
「ここに……愛情が……」
そう呟くと、カノンはコロッケを見つめたまま小さく微笑んだ。
「こんな美味しいコロッケ……。
いくらお金を払ってでも食べたいわ……」
「お、嬉しいこと言ってくれるねー」
「やっぱりお金お支払いします。
おいくらですか?」
カノンがそう言うと、おっちゃんは笑顔のままやんわり断った。
「いいんだよ。
これはサービスなんだから。
俺から君達への気持ちだ」
「でも……」
「いいからいいから。
その代わり、また来てくれたら嬉しいよ。
コロッケ揚げて待ってっから」
おっちゃんがそう言うと、カノンは少し驚いたような顔をして……でも、小さく微笑んでいた。
「……はい。
また来ます……必ず」