お姫様に花束を
「そ、そんなの……カノンが城に帰ってこないって聞いたから……ど、どうせここにいるんだろうと思って……」
「それで町民に私がここにいることを触れ回って、ここに押し掛けさせた……ってことね」
……え?
俺が驚きながらカノンを見れば、カノンはまるで刺すような視線でディラン様を見つめていた。
「触れ回ったって……」
「おかしいと思ってたの。
何で夜に突然町民が大勢押し掛けてきたのか。
バレるにしても早いし、これは何かあるんじゃないかって思ってたんだけど……。
……ディランが現れてはっきりしたわ」
ディラン様は悔しそうに顔を歪めて、拳を握りしめた。
「あぁ、そうだよ!
俺が町民をここに来させたんだ!!」
突然、ディラン様がそう叫ぶ。
「何でそんなこと……」
俺がそう呟くと、ディラン様は俺を睨みつけながら大声を上げた。
「お前が悪いんだよ!
お前が現れてからカノンはおかしくなった!
こんなことでもしないとカノンは戻ってこないと思ったんだよ!
なのに……カノン、お前まだそいつと一緒にいるつもりか?
そいつはお前に悪影響しか与えない!
早いとこ城に戻って……」
怒鳴り散らすディラン様。
冷静さを失っている。
そんなディラン様を咎めようとカノンが口を開こうとした……その時だった。
「……そこまでじゃ」
……今まで俺達の横で静観していたゲンさんが突然声を発した。