お姫様に花束を
翌日。
私達は別荘まで迎えに来てくれたゲンさんと一緒にコアブリーの花畑へと向かっていた。
「何年ぶりじゃろうか。
こうして町民以外の者をあの場所へ連れていくのは」
「あまり知られてないですよね。
この町がコアブリーの原生地だって」
私がそう言うと、ゲンさんはゆっくり頷く。
「わしら町民がよそ者をあの場所へ連れていくことはそうそうないからのう」
「え……どうしてですか?
奇跡の花なんて呼ばれてる花ならみんな興味があるだろうし……観光客も大勢来ると思うけど……」
リオンが疑問に思ったことをそのまま尋ねてみると、ゲンさんは首を横に振った。
「それはダメじゃ」
「え?」
何で……?
リオンが首を傾げると、ゲンさんがリオンの疑問に答えてくれた。
「昔はの、この町はコアブリーの原生地としてとても有名だったんじゃ。
……この町が奇跡の町と呼ばれていたということを話したじゃろ。
その一番大きな由縁がコアブリーという奇跡の花の原生地であるということだったんじゃ」