お姫様に花束を
「昔はコアブリー目当てに多くの観光客が集まったもんじゃ。
わしらもあの場所を解放しておったからの。
みんな奇跡の花を見て感動しておった。
……じゃが、コアブリーのその美しさゆえに摘んで帰ろうとする者もいての。
一時期、そのせいで花畑が荒れかけたこともあった」
そんなことが……。
「じゃから、わしらはあの場所を町民以外立ち入り禁止にした。
よそ者は本当に信頼できる者以外入れないようにしたんじゃ。
それでもこの町には他にも美しい自然がいっぱいあるからの、観光客は途絶えなかったんじゃが……時代が変わっていくと共に徐々にそれも少なくなっていって。
今の若いモン達はコアブリーの存在自体は知っていてもそれがどこにあるかなんぞ知らんじゃろ」
確かに……私達もあの写真を見るまで知らなかったし……。
「私達が……その場所に入ってもいいんですか?」
「お前さん達なら町民は誰も文句は言うまい。
言ったじゃろ。
本当に信頼できる者以外入れんと」
ゲンさん……。
ゲンさんはまっすぐ私の目を見た。
「……カノン。
みんな、お前さんを信じとる。
この町を守ってくれると……信じとるからな」
……私はゲンさんの目を見ながらゆっくり頷いた。
ゲンさんはそんな私を見て嬉しそうに笑った。