お姫様に花束を
「二組目、じゃな」
ゲンさんがポツリと呟く。
私達が不思議そうにゲンさんを見れば、ゲンさんは空を仰ぎながらゆっくり口を開いた。
「あの場所を立ち入り禁止にしてから、わしらがあの場所によそ者を案内するのは……お前さん達が二組目じゃ」
二組目……。
じゃあ、もしかして……
「一組目は……」
「前国王夫妻じゃ。
といっても、まだ夫婦になる前の話じゃがな」
おじい様とおばあ様……。
「あのお二方はこの町の町民から愛されておった。
……あぁ、そうじゃ。
前に話したじゃろ。
ナツメザクラの花びらを同時に掴んだらその二人は幸せになれる、という話」
「あのロマンチックな話ですか」
「あれはの、前国王夫妻の実話なんじゃ」
「え……」
そういえば、ゲンさんが言ってた。
あれは50年以上前の実話を元にした話だって……。
「前国王夫妻が実際にあのハート型の花びらを掴んで……ずっと幸せに暮らしておった。
そのことからあの話が広まったんじゃ」
そうだったんだ……。
……私はおじい様とおばあ様の姿を思い出す。
あの二人はいつも仲が良くて……そして、とても幸せそうだった。