お姫様に花束を
商店街を抜けると、俺のアパートはもうすぐそこだ。
カノンはコロッケを食べてからとても上機嫌になっていた。
「ジェイクさん、とっても良い人ね。
コロッケも美味しいし」
「おっちゃん、よく俺にサービスしてくれるんだよな」
「それはきっと……リオンが良い人だからじゃない?」
「え?」
俺が聞き返すと、カノンは俺の顔を見ながらにっこり笑った。
「だって、悪い人にただで物なんかあげたくないでしょ?
リオンは良い人だから。
だからサービスしてくれるんだよ、きっと」
……そんな純粋な瞳でまっすぐ俺の方を見ながら言われたら――
「……い、いや……別にそんな良い人じゃないよ俺は」
「良い人だよ、リオンは」
カノンは歩いていた足を止めてまっすぐ俺の目を見た。
「こうして私に付き合ってくれてるし……ね?」
「あ………」
……分かってたのか。
カノンは申し訳なさそうに笑った。