お姫様に花束を


でも……公園か……。

んー……公園で遊んだことはないけど、城の庭ではよく遊んだな。


お兄様とエリックと。

あ、時々ウェルスも一緒に遊んでくれたっけ。


鬼ごっことかして……鬼はほとんどエリックだったけど。


私にもあったな……無邪気な頃が。


私は微笑ましい気持ちで公園で遊んでいる子供達の姿を見つめる。


……すると、一人の子によって投げられたボールが、誰にもキャッチされずにコロコロと転がっていった。

そのボールを追いかける子供。


ボールは公園を出て、道路にまで転がっていく。


子供は慌てて道路に飛び出してボールを拾った。


……その時。


プップー!!と激しくクラクションを鳴らしながら車が走ってきた。

子供は驚いた様子で足がすくんだのか動かない。


「危ない!!」


私は思わずその子の元へ駆け寄る。

急いでその子を歩道側へと突き飛ばす。


……その瞬間。


キキーッ!!とものすごいブレーキ音が聞こえ……車が私の目前まで迫ってきた。


……轢かれる……


そう思ってギュッと目を閉じた瞬間……


「カノン!!」


……リオンの切羽詰まった声が聞こえ、それと同時に私の背中に押されたような衝撃が走り歩道側へと体が傾く。

体が地面についた瞬間……私の意識は途絶えた――

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