お姫様に花束を


子供を庇った後、近づいてきた車を見て立ち尽くしたカノンに俺は必死に駆け寄り、カノンを歩道側へと突き飛ばした。

俺も間一髪で車を避け、幸い手に擦り傷をしただけで済んだが……。


カノンは俺が突き飛ばした際に頭を打って気絶した……。


俺は医者に教えてもらったカノンの病室へと向かう。

扉を開けると、カノンがベッドの上に横たわっている姿が目に入った。


俺はベッド脇のイスに腰掛ける。


カノンの顔を見つめながらそっと手を握った。

小さくて華奢な手。

だけど、全国民の生活がかかっている……俺よりもずっとずっと大きな手。


「……ごめん」


ちゃんと守ってやれなくて……。


俺がそう呟くと、握っていたカノンの手がピクリと動いた。
< 245 / 271 >

この作品をシェア

pagetop